夢乃くんにご注意ください
それから夢乃くんはジャスミンティーを2杯おかわりしてくれて、すっかり機嫌も元通りになった。
この穏やかになった空気を壊したくはないけれど、私はまだ夢乃くんに隠していることがある。
「夢乃くん、あの……」
「んー?」
夢乃くんは夕方にやっている再放送のドラマを見ていた。
このドラマが終わったあとのほうがいいだろうか……。いや、そんなことをしてたらタイミングを逃してしまう。
意を決して私は夢乃くんのほうに身体を向けた。
「ゆ、夢乃くんが不良だったってこと、音弥くんから聞いてしまいました……!」
考えてみればコソコソと夢乃くんのことを探ろうとしてしまった自分が情けない。
たしかに知りたい気持ちはあったけど、それは音弥くんじゃなくて夢乃くんに聞けばよかっただけのこと。
「うん。そうだよ」
私の決意はどこへやら。
夢乃くんはあっけらかんとした反応。
「音弥くんと悪いこともしてたって……」
「うん。したした。中学の時けっこう荒れてたから。思春期だったからかな?あの頃は毎日イライラしててさ、もう目に見えるもの全部ぶっ壊したい衝動に襲われてた」
あはは、と笑う夢乃くんからはやっぱり想像がつかない。