夢乃くんにご注意ください
「俺、瑠花のこと見てるしちゃんと考えてるよ」
夢乃くんが真剣な顔で言った。
「でもまだ待って。俺には整理しなきゃいけないことがあるんだ」
疑う気持ちなんて1ミリもない。
「……彩芽ちゃんのこと、ですよね?」
すると夢乃くんは小さく頷いた。
そして私たちはソファーに座り直して夢乃くんがぽつり、ぽつりと話してくれた。
「彩芽とは小学校から同じでその頃から妹みたいに『好き、好き』って言ってくれてたんだ。それで中学に上がっても彩芽は毎日気持ちを伝えてきて、まあ、いいかなみたいな気持ちで俺も受け入れた」
「………」
「可愛いとは思ってたしキライじゃなかった。……でも好きだったのかと聞かれたら多分違う」
リビングでは壁にかけられている時計がカチカチと進んでいた。
それでも夢乃くんのことが知りたくて、私は言葉を待つ。
「でも気持ちがないまま俺は付き合ってた。彩芽は当時つるんでた仲間たちのマドンナ的存在だったし、周りから公認カップルなんて呼ばれてたから、なかなか関係を切れずにいたんだ」
夢乃くんの顔は彩芽ちゃんへの申し訳なさと、あとひとつ。後悔のようなものが見え隠れしていた。