夢乃くんにご注意ください
周りがシーンと静まり返っていた。その空気に足がすくみそうになりながらも優しく助けてくれるのはやっぱりこの人。
「頑張ったね」
よしよし、と夢乃くんは私の頭を撫でてくれた。そして視線は私から彩芽ちゃんへ。
「ごめん。俺は彩芽の気持ちには応えられない」
ざわっと夢乃くんと彩芽ちゃんの間に風が通り抜けていった。
「本当は貸してたものを返してもらったあとに言おうと思ってた」
「………」
「中途半端に彩芽を受け入れたこと。彩芽の気持ちを踏みにじるようなことをした俺が全部わるい。……本当にごめんね」
もしかしたら夢乃くんも彩芽ちゃんのことが気がかりで、ずっと恋愛できずにいたのかもしれない。
彩芽ちゃんを気にかけてあげなかった後悔から、他の女の子たちにも当たり障りない態度をとって傷つけないようにした。
それは全部彩芽ちゃんにたいしてしてあげられなかったことだから。