夢乃くんにご注意ください


「なんで桐人が謝るの?私は桐人を恨んでない」

「でも……」

「……っ、私も嘘ついてたの……!」

次に泣きそうな顔をしたのは彩芽ちゃんだった。


「……あの日イタズラされたなんて嘘。カラオケボックスに連れ込まれたのは本当だけど大声を出したらすぐに店員が来てくれたの」

「………」

「でも桐人の気を引きたくて、どうしても繋ぎとめておきたくて男の人がダメになったって嘘ついてた……。私こそ桐人に謝らなきゃいけない。本当にごめんなさいっ……」


彩芽ちゃんの瞳から涙がこぼれた。

彩芽ちゃんはそれぐらい夢乃くんのことが好きなだった。振り向いてほしくて必死だったのだ。

もらい泣きしそうになりながらも我慢して、夢乃くんはゆっくりと彩芽ちゃんの傍にいった。


「知ってたよ」

「……え?」

ぐしゃぐしゃの顔になった彩芽ちゃんが顔をあげる。


「彩芽を連れ込んだ男たちをすぐ突き止めて俺と音弥で殴りにいったんだよ。……そしたらなにもしてないって。しようと思ってたけど、なにもしないで帰ったって言ってた」

「………」

「まあ、そのあとまた彩芽を狙わないように音弥が引くぐらい殴ってたけど」

はは、と笑みを見せたあと、もう一度繰り返すように夢乃くんが言う。


「だから全部知ってたんだよ、彩芽」

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