夢乃くんにご注意ください


「ま、待ってください」

「ダメ」

「キスなら前にしたじゃないですか」

「あんなのしたことにならないよ」

そう言って夢乃くんは綺麗な指で私の唇をなぞる。


「キスはもっと甘くて、気持ちいいものだよ」

夢乃くんの重さが心地いいものに変わって、身体の熱さでおかしくなったのかもう抵抗することも忘れていた。


「瑠花、目つぶって」

その言葉に私はそっと目を閉じる。


破裂しそうなぐらいの心臓の音と、夢乃くんの顔が近づいてくる気配。

夢乃くんの手が私の頬に添えられてクイッと顎をあげられた。そして……。


――ピンポーン。

リビングに響くインターホンの音。


「ゆ、夢乃くん誰か来ましたよ」

「べつにいい」


――ピンポーン、ピンポーン。


「やっぱり出たほうが……」

「こっちのほうが大事だから」


――ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。


「あー、もう!!」

夢乃くんが珍しくイラついた様子でインターホンのボタンを押す。画面に映っていたのは……。
< 152 / 158 >

この作品をシェア

pagetop