夢乃くんにご注意ください
「俺様系フェロモン男子なら俺も負けてないと思うんだよね」
夢乃くんの指先がわざと鎖骨をなぞるような動きをする。
本当に意地悪な顔。
そんな夢乃くんにドキドキしてる自分が悔しい。
「これからすごいこと、してみる?」
夢乃くんがわざと耳元で囁いた。
ゲームでは感じられない吐息や体温。これが二次元だったらニヤニヤして攻略できるのに今はそんな余裕はない。
ごくりと唾を飲み込んで、私は視線を無意味にテレビのほうへ。
「す、すごいことってなんですか?腕相撲ですかね?」
こんな誤魔化し方しかできない自分はなんのために死ぬほど乙ゲーにのめり込んできたのか。
ここはあざ笑って「もう、冗談言うなら帰るからね」と大人の対応をするのが正解なのに……!
「はは、やっぱり瑠花は面白いなあ」
夢乃くんは私を赤ちゃんのように持ち上げて、倒された身体は元の位置へ。
そして「冗談だよ」と頭を撫でられて、どうやら大人の対応に慣れているのは夢乃くんのほうらしい。
ちょっとこのままじゃ私は夢乃くんに攻略されてしまうかもしれない。
いや、そんなことは(右京さまがいるから)絶対にありえないんだけど、夢乃くんのフェロモンは半端ないというか……。
改めてとんでもない人に捕まってしまったことを自覚した。