夢乃くんにご注意ください


「キスした時の瑠花は可愛かったよ」

さっきまで落ち込んでた夢乃くんはもう意地悪な顔。


「からかうと怒りますからね」

「いつも怒られてますけどね」

夢乃くんはクスリと笑う。


あともう少しで朝のホームルームがはじまる時間。教室に行ったらきっとみんなの注目を浴びるだろうな。

公衆の面前でキスをしてしまった恥ずかしさもそうだけど、心配なのはそれを見てしまった女の子たち。


またなにか言われるのが怖いんじゃなくて、ショックだっただろうなって。

夢乃くんの立場を考えたら仕方ないことだったのかもしれないけど、どちらかといえばファンの子の気持ちのほうが理解できてしまう。


「……私、みんなが夢乃くんを求めている気持ちが分かります。私が右京さまに対してそうだから」


私の場合は対象がゲームのキャラクターというだけで、その真意は夢乃くんファンのみんなと変わらない。

右京さまがもし現実にいたらきっと息が詰まるだろう。

求められるだけ、理想を押し付けられるだけ。私は求める側の人間だから求められるほうの気持ちなんて考えたことはなかった。

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