夢乃くんにご注意ください
「そろそろ帰るよ」
夢乃くんが立ち上がった。
私はちょうど夕飯の準備をしようと思ってたところだった。
夢乃くんもきっと家に帰ってもひとり。あの広い空間でインスタントのものを食べるんだろうか。
「あの、夕ごはん食べていきますか?」
私の言葉に夢乃くんは目を丸くしていて、家に行きたいとかアルバムを見たいとかワガママを言うくせに、こういうところは意外にも謙虚だ。
「どうせ自分のぶんは作るので、ついでにその……」
なんだか夢乃くんを引き止めてしまってる感じ。
「ついで、なの?」
夢乃くんが目ざとく噛みつく。
「いえ、そういう意味ではなく……えっと」
ひとりで食べるなら一緒に食べようと素直に言えばいいのに上手く言葉が出てこない。
すると夢乃くんは私の心を読んだみたいに玄関に向かうのをやめた。
「食べるよ。俺、瑠花の作るごはん大好きだし」
首を傾げて私の顔を覗き込む仕草。
……これは絶対、狙って言ってる。
食材を切り始めて数分。私は冷蔵庫を開けてあることに気づいた。
「どうしたの?」
「いや、ケチャップがなくて」
オムライスを作ろうと思ったのにケチャップがなければなにもできない。私は慌ててカバンからお財布を取り出した。
「ちょっとコンビニに行ってきます!」
家からは10分もしないぐらいの距離だし、走ればもう少し早く……。
「なに言ってんの?一緒に行こうよ」
「でも……」
「いいから行くよ」
結局、夢乃くんとコンビニに向かうことになった。