夢乃くんにご注意ください


そう。そうなのだ。

私はあの瞬間、雷に打たれたような衝撃を感じた。

背丈も体格も顔も髪型も、なにもかもが右京さまそのもの!右京さまが現実世界に現れたと錯覚したぐらい。

だからあの日の夜は眠れなかった。

アプリを開いて三次元の右京さまにのめり込もうとしても、生右京さまが頭に浮かぶ。


「似てないよ。本当にその眼鏡度が合ってるの?」


その日の昼休み。また私は夢乃くんとお弁当。


「失礼ですね!よく見てくださいよ!」

ゲームの右京さまの画面を出して何度も夢乃くんに見せる。それでも夢乃くんは目を細めて「似てないね」と繰り返すだけ。


目が悪いのは夢乃くんのほうじゃないかな。

こんなにそっくりで、むしろ似てないところを見つけることが難しいぐらいなのに……!


「あの時は薄暗かったし見間違いだよ。実物の音弥なんてこのカニウインナーみたいな顔してるよ」

それがどんな顔なのかイマイチ想像がつかないけれど、やっぱり私の見間違いだったんだろうか。

同じ中学出身の夢乃くんが言うんだから、私のほうが信ぴょう性は薄いけど……。
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