不器用王子の甘い誘惑
起きるとシャワーも浴びずに寝たせいで体が気持ち悪い。
終電で帰って、何もする気になれなくて………。
そうだ!連絡先。
テーブルの上に置いておいた手帳の切れ端。
そこに書かれた電話番号にさっそく電話しようと携帯を手にした。
そして数秒後に撃沈した。
電話口から流れて来たのは聞くとは思わなかった言葉。
「お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません。もう一度………。」
ため息をつくと体が気持ち悪かったことを思い出してシャワーを浴びることにした。
「それ、からかわれてるって。」
1人でいる気持ちになれなくて、亘といつものカフェにいた。
亘にダメ出しされるくらいなら1人でいた方が良かったかもしれないけど。
「俺も急に渡したから、からかうためにわざわざ高校の頃の手帳を渡すとは思えない。」
亘に電話をしてから、よくよく手帳の切れ端を見ると『大学に行っても友達』と書かれたメッセージを見つけて、だから好きな食べ物とか書く欄があるわけだと納得した。
「手の込んだからかいかも分かんねーよ。」
「あの方のお話ですか?」
コーヒーを運んでくれたマスターが話に加わった。
亘は賛同者を増やそうと躍起になっている。
「マスターどう思う?
絶対に騙されてるって思いません?」
「騙す理由がない。」
亘は『あの子』批判派なんだから、話すんじゃなかったと後悔した。
「また会えるのですか?その方と。」
マスターが穏やかに質問をして、俺も冷静になれた。
「はい。今は同じ職場で。
ほら。亘。会えるんだから、嘘の電話番号を教えても俺に追求される。
そんな意味ないことしないって。」
「分かんねーぞ。
改めて番号聞かれて仲を深めようって魂胆かもしれないだろ。」
「はいはい。亘くん。
負けは認めましょうね。
私は爽助くんの麗しの君はいい子だと思いますよ。」
麗しの君……かぁ。
紗良はどちらかと言えば愛しの君かな。
「麗しの君って……。
あ、ちょうど爽助の麗しの君が来たよ。」
「ヤダ。なんの話?
爽助、こっちの会社に来てるんだって?」
話しかけて来た女性は親しげに爽助の肩に手を置くと、微笑んで同じテーブルを囲んだ。
「あぁ。麗華。
こっちの会社はなかなかだね。」
気心が知れた人に会えて、つい愚痴をこぼした。
清水麗華。亘と同じく幼馴染。
シープに勤めていて、俺が行っていることをどこからか聞いたようだ。
正直、紗良の周りの先輩には閉口する。
それに男性社員と女性社員の格差も感じた。
「爽助はそのために来たんでしょ?
頼もしい婚約者さん。」
そうだった。
俺はそのために来たんだった。
偶然『あの子』に会えて見失うところだった。
麗華と話すと仕事モードに入れて、忘れそうな熱意や会社を良くしていこうという貪欲さが湧いてくる。
「こっちの台詞だよ。
頼もしいフィアンセ殿。」
戯けてみせて笑い合った。
例え『あの子』が俺を忘れていたって俺は王子様になれるような男でなければ。
終電で帰って、何もする気になれなくて………。
そうだ!連絡先。
テーブルの上に置いておいた手帳の切れ端。
そこに書かれた電話番号にさっそく電話しようと携帯を手にした。
そして数秒後に撃沈した。
電話口から流れて来たのは聞くとは思わなかった言葉。
「お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません。もう一度………。」
ため息をつくと体が気持ち悪かったことを思い出してシャワーを浴びることにした。
「それ、からかわれてるって。」
1人でいる気持ちになれなくて、亘といつものカフェにいた。
亘にダメ出しされるくらいなら1人でいた方が良かったかもしれないけど。
「俺も急に渡したから、からかうためにわざわざ高校の頃の手帳を渡すとは思えない。」
亘に電話をしてから、よくよく手帳の切れ端を見ると『大学に行っても友達』と書かれたメッセージを見つけて、だから好きな食べ物とか書く欄があるわけだと納得した。
「手の込んだからかいかも分かんねーよ。」
「あの方のお話ですか?」
コーヒーを運んでくれたマスターが話に加わった。
亘は賛同者を増やそうと躍起になっている。
「マスターどう思う?
絶対に騙されてるって思いません?」
「騙す理由がない。」
亘は『あの子』批判派なんだから、話すんじゃなかったと後悔した。
「また会えるのですか?その方と。」
マスターが穏やかに質問をして、俺も冷静になれた。
「はい。今は同じ職場で。
ほら。亘。会えるんだから、嘘の電話番号を教えても俺に追求される。
そんな意味ないことしないって。」
「分かんねーぞ。
改めて番号聞かれて仲を深めようって魂胆かもしれないだろ。」
「はいはい。亘くん。
負けは認めましょうね。
私は爽助くんの麗しの君はいい子だと思いますよ。」
麗しの君……かぁ。
紗良はどちらかと言えば愛しの君かな。
「麗しの君って……。
あ、ちょうど爽助の麗しの君が来たよ。」
「ヤダ。なんの話?
爽助、こっちの会社に来てるんだって?」
話しかけて来た女性は親しげに爽助の肩に手を置くと、微笑んで同じテーブルを囲んだ。
「あぁ。麗華。
こっちの会社はなかなかだね。」
気心が知れた人に会えて、つい愚痴をこぼした。
清水麗華。亘と同じく幼馴染。
シープに勤めていて、俺が行っていることをどこからか聞いたようだ。
正直、紗良の周りの先輩には閉口する。
それに男性社員と女性社員の格差も感じた。
「爽助はそのために来たんでしょ?
頼もしい婚約者さん。」
そうだった。
俺はそのために来たんだった。
偶然『あの子』に会えて見失うところだった。
麗華と話すと仕事モードに入れて、忘れそうな熱意や会社を良くしていこうという貪欲さが湧いてくる。
「こっちの台詞だよ。
頼もしいフィアンセ殿。」
戯けてみせて笑い合った。
例え『あの子』が俺を忘れていたって俺は王子様になれるような男でなければ。