不器用王子の甘い誘惑
11.覚めた夢は夢
月曜日になり、あんなことがあってから初めて顔を合わせる。
席にいると周りの人に挨拶をしながらこちらに歩いてくる松田さんの気配を感じて体を固くした。
どうしよう。なんて挨拶されるんだろう。
「おはよう。天野さん。」
「お、おはようございます。」
普通に天野さんだった。
紗良って呼ばれたのは夢か何か?
急に「紗良、可愛い」を思い出して顔が熱くなる。
「どうした?天野さん。体調悪いの?」
早瀬主任に声をかけられて余計に恥ずかしい。
思い出し赤面って何よ。
「本当だ。医務室に行くかい?」
松田さんは涼しい顔で聞いてくる。
誰のせいよ。誰の。
「大丈夫です。お気遣いなく。」
それから本当に気遣いも変化もなく、元々話すほど仲が良かったわけでもなく、ほとんど話さないままだった。
瑞稀が言うみたいに、からかわれてたんだなぁ。
浮かれてて馬鹿みたい。
もしあそこで私がうっかり泊めたりしていたら一夜の過ちみたいな感じでもっと居た堪れない気持ちだね。
良かった。そんなことしないで。
とぼとぼと歩く帰り道は惨めで、だけどお互いに酔っぱらった失態ということで良かったんだと思うことにした。
先輩から仕事を頼まれたとかでもなく普通に残業になっちゃったけど、松田さんはさっさと帰っちゃったし。
何かされたわけでもないのに、何を落ち込んでいるんだろうと顔を上げるとアパートのすぐ前に見慣れない車。
とても高級そうな……嘘、松田さんが乗っている。
颯爽と降りて来た松田さんはカッコよくて目眩がしそうだった。
練習は……あれは本当に約束だったんだ。
それにきっと食事の約束も。
「お姫様。お迎えにあがりました。」
車のドアを開けてくれる松田さんは本物の王子様みたいだった。
「押しかけるような真似してごめんね。」
思わず開けられたドアに素直に乗っていた。
助手席に乗るのは初めてで恐れ多かったかなと恐縮する。
しかも高級そうなと思ったら左ハンドル!
車のこと全然分からないのにどうしよう。
「す、素敵な車ですね。」
声が上擦って恥ずかしい。
「ありがと。本当はね馬車で迎えに行きたかったんだけど、そうもいかないからね。」
柔らかい笑顔でそう言う松田さんに、小さい頃はお姫様になりたかったって言ったことを思い出した。
あんなこと話して、しかも大泣きして…。
「その節はご迷惑を……。」
「フフッ。迷惑だなんて思ってないよ。
会社で話したかったんだけど、いい具合に仲良く話すなんて芸当ができなくて。」
そういえば内緒にしようみたいな話をしたんだっけ。
秘密の関係って。
瑞稀に言わせると秘密のって言うところが怪しいって言ってた。
でもそれは私が公にされると困るからで。
「好き嫌いなかったかな?」
「はい。食事に行くんですよね?
それなら私に奢らせてください。
ご迷惑をかけてばっかりで。」
「ハハッ。それはいいよ。
今回は俺からの強引な誘いなんだから。」
席にいると周りの人に挨拶をしながらこちらに歩いてくる松田さんの気配を感じて体を固くした。
どうしよう。なんて挨拶されるんだろう。
「おはよう。天野さん。」
「お、おはようございます。」
普通に天野さんだった。
紗良って呼ばれたのは夢か何か?
急に「紗良、可愛い」を思い出して顔が熱くなる。
「どうした?天野さん。体調悪いの?」
早瀬主任に声をかけられて余計に恥ずかしい。
思い出し赤面って何よ。
「本当だ。医務室に行くかい?」
松田さんは涼しい顔で聞いてくる。
誰のせいよ。誰の。
「大丈夫です。お気遣いなく。」
それから本当に気遣いも変化もなく、元々話すほど仲が良かったわけでもなく、ほとんど話さないままだった。
瑞稀が言うみたいに、からかわれてたんだなぁ。
浮かれてて馬鹿みたい。
もしあそこで私がうっかり泊めたりしていたら一夜の過ちみたいな感じでもっと居た堪れない気持ちだね。
良かった。そんなことしないで。
とぼとぼと歩く帰り道は惨めで、だけどお互いに酔っぱらった失態ということで良かったんだと思うことにした。
先輩から仕事を頼まれたとかでもなく普通に残業になっちゃったけど、松田さんはさっさと帰っちゃったし。
何かされたわけでもないのに、何を落ち込んでいるんだろうと顔を上げるとアパートのすぐ前に見慣れない車。
とても高級そうな……嘘、松田さんが乗っている。
颯爽と降りて来た松田さんはカッコよくて目眩がしそうだった。
練習は……あれは本当に約束だったんだ。
それにきっと食事の約束も。
「お姫様。お迎えにあがりました。」
車のドアを開けてくれる松田さんは本物の王子様みたいだった。
「押しかけるような真似してごめんね。」
思わず開けられたドアに素直に乗っていた。
助手席に乗るのは初めてで恐れ多かったかなと恐縮する。
しかも高級そうなと思ったら左ハンドル!
車のこと全然分からないのにどうしよう。
「す、素敵な車ですね。」
声が上擦って恥ずかしい。
「ありがと。本当はね馬車で迎えに行きたかったんだけど、そうもいかないからね。」
柔らかい笑顔でそう言う松田さんに、小さい頃はお姫様になりたかったって言ったことを思い出した。
あんなこと話して、しかも大泣きして…。
「その節はご迷惑を……。」
「フフッ。迷惑だなんて思ってないよ。
会社で話したかったんだけど、いい具合に仲良く話すなんて芸当ができなくて。」
そういえば内緒にしようみたいな話をしたんだっけ。
秘密の関係って。
瑞稀に言わせると秘密のって言うところが怪しいって言ってた。
でもそれは私が公にされると困るからで。
「好き嫌いなかったかな?」
「はい。食事に行くんですよね?
それなら私に奢らせてください。
ご迷惑をかけてばっかりで。」
「ハハッ。それはいいよ。
今回は俺からの強引な誘いなんだから。」