不器用王子の甘い誘惑
そわそわしながら待っているとインターホンが鳴った。
「紗良。メリークリスマスイヴ!」
「ふふっ。なんですか。それ?」
「メリークリスマスは25日に言うらしいから。」
「24日はそう言うんですか?」
「さぁ。雰囲気を出したかっただけ。」
紗良は一筋縄ではいかないことが多くて、普通ならクリスマスディナーを予約したら喜ぶでしょ。
それなのに家がいいって言うし。
イブを俺の方が楽しみにしてそうで……。
いつだって俺の方が気持ちが大きい気がするんだ。
「お休みの日なのにスーツなんですか?
いつものスーツよりお洒落ですけど。」
「あぁ。これはさ。紗良も着替えて。」
紗良を寝室に連れて行って、渡したかったものを見せる。
「え……。これって。」
「イブニングドレス。
本当はこれを着てディナーに行きたかったんだけどね。」
濃い青色のドレスは胸元にパールと濃い青色の同じ生地で花があしらってあって、腰の上の方には煌めくライン。
そこから緩やかにふんわりとしたシルエットは足元を隠すくらいの長さがある。
「素敵……ですけど、私が着るんですよね?
だってこれ、肩に何もないです……。
肩も腕も出して着るって………。」
紗良は夢見がちな可愛い女の子だったのに、何かあったとは言え、現実的になり過ぎてるんだよね。
「着てみてよ。きっと似合うから。」
「………だって色々と足りなくて、あとは余計なところにお肉も……絶対にがっかりしますよ!」
「そしたら笑ってあげるから。」
むくれる紗良を残して寝室を出た。
写真と身長を見せてサイズを決めたから、大丈夫なはず……。
レストランに行くのならサイズを合わせるつもりだったけど……。
「あの……。やっぱり恥ずかしいです。」
寝室を開けて、笑えたらどうしようと思っていたら、そこには目のやり場に困る紗良がいた。
自分で選んだはずなのに……。
胸元が大きく開いたドレスからは白くて滑らかな肌が出ていて、華奢な肩と腕へと続いている。
あぁ。もう。
予定をいつも狂わされて……。
無言でネクタイを緩めてボタンを数個外した。
紗良の側まで歩み寄ると、紗良が………震えていた。
「なんで震えてるの?俺、怖かった?」
コクコクと首を上下させる紗良にジャケットを脱いで肩にかけた。
ジャケットを脱ぐ時でさえ、小動物みたいにビクッと肩を揺らす紗良に、あぁ男として見られてなかったわけじゃないのか、と些かホッとした。
ゆっくり手を伸ばして、そっと腕の中に導くとよろめいた紗良が胸元にぶつかった。
抱きしめてもまだ少し震えている。
「ごめん。少しやり過ぎたかな。」
「はい。
雰囲気が違うくて…なんていうか……。」
「前にVのシャツが色っぽいって言われたから、ネクタイ緩めたらどう言うかなって思って。」
「そんなことしなくても……。」
「うん。ごめん。
怖がらせるんじゃなくて、ドキドキさせたかったんだ。」
本当はまだ後で披露するつもりだったけど、予定を狂わされたんだ。
まさか怖がるとは思わなかった。
「そんなことしなくても、いつもドキドキしてますよ。」
ちょっと怒った声が聞こえて、フッと息が漏れる。
それを聞き逃さなかった紗良が余計に怒って顔を上げた。
「松田さんは……。」
おでこをコツンと当てて「いい加減、爽助って呼んで。」と怒ったような声を出す。
「それは……。
恐れ多いというか……。」
「何それ。紗良は彼女だよね?」
「………………。」
「違うの!?」
まさかの友達の延長とかそういうこと?
「違わないと……思います。」
本当は……本当はもっと近づきたいんだ。
紗良の心と紗良の………。
でもまだ隠しておかなきゃ。
後で……後でね。
「紗良。メリークリスマスイヴ!」
「ふふっ。なんですか。それ?」
「メリークリスマスは25日に言うらしいから。」
「24日はそう言うんですか?」
「さぁ。雰囲気を出したかっただけ。」
紗良は一筋縄ではいかないことが多くて、普通ならクリスマスディナーを予約したら喜ぶでしょ。
それなのに家がいいって言うし。
イブを俺の方が楽しみにしてそうで……。
いつだって俺の方が気持ちが大きい気がするんだ。
「お休みの日なのにスーツなんですか?
いつものスーツよりお洒落ですけど。」
「あぁ。これはさ。紗良も着替えて。」
紗良を寝室に連れて行って、渡したかったものを見せる。
「え……。これって。」
「イブニングドレス。
本当はこれを着てディナーに行きたかったんだけどね。」
濃い青色のドレスは胸元にパールと濃い青色の同じ生地で花があしらってあって、腰の上の方には煌めくライン。
そこから緩やかにふんわりとしたシルエットは足元を隠すくらいの長さがある。
「素敵……ですけど、私が着るんですよね?
だってこれ、肩に何もないです……。
肩も腕も出して着るって………。」
紗良は夢見がちな可愛い女の子だったのに、何かあったとは言え、現実的になり過ぎてるんだよね。
「着てみてよ。きっと似合うから。」
「………だって色々と足りなくて、あとは余計なところにお肉も……絶対にがっかりしますよ!」
「そしたら笑ってあげるから。」
むくれる紗良を残して寝室を出た。
写真と身長を見せてサイズを決めたから、大丈夫なはず……。
レストランに行くのならサイズを合わせるつもりだったけど……。
「あの……。やっぱり恥ずかしいです。」
寝室を開けて、笑えたらどうしようと思っていたら、そこには目のやり場に困る紗良がいた。
自分で選んだはずなのに……。
胸元が大きく開いたドレスからは白くて滑らかな肌が出ていて、華奢な肩と腕へと続いている。
あぁ。もう。
予定をいつも狂わされて……。
無言でネクタイを緩めてボタンを数個外した。
紗良の側まで歩み寄ると、紗良が………震えていた。
「なんで震えてるの?俺、怖かった?」
コクコクと首を上下させる紗良にジャケットを脱いで肩にかけた。
ジャケットを脱ぐ時でさえ、小動物みたいにビクッと肩を揺らす紗良に、あぁ男として見られてなかったわけじゃないのか、と些かホッとした。
ゆっくり手を伸ばして、そっと腕の中に導くとよろめいた紗良が胸元にぶつかった。
抱きしめてもまだ少し震えている。
「ごめん。少しやり過ぎたかな。」
「はい。
雰囲気が違うくて…なんていうか……。」
「前にVのシャツが色っぽいって言われたから、ネクタイ緩めたらどう言うかなって思って。」
「そんなことしなくても……。」
「うん。ごめん。
怖がらせるんじゃなくて、ドキドキさせたかったんだ。」
本当はまだ後で披露するつもりだったけど、予定を狂わされたんだ。
まさか怖がるとは思わなかった。
「そんなことしなくても、いつもドキドキしてますよ。」
ちょっと怒った声が聞こえて、フッと息が漏れる。
それを聞き逃さなかった紗良が余計に怒って顔を上げた。
「松田さんは……。」
おでこをコツンと当てて「いい加減、爽助って呼んで。」と怒ったような声を出す。
「それは……。
恐れ多いというか……。」
「何それ。紗良は彼女だよね?」
「………………。」
「違うの!?」
まさかの友達の延長とかそういうこと?
「違わないと……思います。」
本当は……本当はもっと近づきたいんだ。
紗良の心と紗良の………。
でもまだ隠しておかなきゃ。
後で……後でね。