俺の大好きなヒトの話をしよう

鈴を転がしたような心地のいい声に反射的に振り返る。長い髪を耳にかけニッコリと愛想よく微笑んでいる彼女は俺の義姉──林 芳野（はやし かぐや）。





「芳野ちゃん！」


彼女を見た途端声のトーンが上り表情も明るくなった俺を見て七斗がうげぇと眉を寄せる。それにイラッときて足を踏みつけるとそいつは意味のない人語にもならない声を上げてその場にしゃがみ込んだ。


はっ、ざまーみろ。




「やっぱり白雪くんだ。それと七斗くんも一緒なのね」

「ど、どうも」

「芳野ちゃん今日は帰り早いね」

「今日の講義は2限だけだったから。でもこの後友達と遊びに行くから帰りは遅くなると思う」

「そっか…」


しゅんと捨てられた子犬をイメージした表情で彼女を見つめた。


俺のこの顔にとことん弱い彼女は視線を右往左往させてから自分より少し高い位置にある俺の頭を優しく撫でる。