俺の大好きなヒトの話をしよう
芳野ちゃんと初めて会ったのは俺が小学校4年生で芳野ちゃんが6年生の時。再婚相手の連れ子としてきたのが彼女だった。
当時の俺は自分の生活にいきなり飛び込んできた第三者の彼女達に慣れなくて学校から家に帰るのも億劫になっていた。
唯一の身内だった父親がよく知らない女の人と楽しげに話している。突然表れた女の子と3人で楽しげに笑っている。
その光景が幼い俺にはまるで絵本の中の物語のように見えたのだ。自分のいないその世界はとても楽しそうで、ある日俺はその家から飛び出した。
誰もいなくなった公園の角。涙でぐちゃぐちゃになった顔を隠す様に蹲っていた。誰かに見てほしくって、でも素直じゃない俺はそんな事を口に出来ずに独りでに感情が爆発してしまったのだ。
そんな俺を迎えに来てくれたのは父親でもあの再婚相手の女の人でもなく、
「白雪くん!」
芳野ちゃんだった。