俺の大好きなヒトの話をしよう
「それで惚れちゃったんだねー、白雪くんは」



ニヤニヤと嫌な笑を浮かべるそいつに眉を寄せる。


そもそもお前が「白雪ってさー、何でそんなに芳野さんのこと好きなん」とか聞くから勉強を見る合間に雑談として話してやっんだよ。

なのにその態度はなんだ。おい。




「気色悪い顔してんじゃねーよ。つか、そこ間違ってんぞ」

「え、マジ?」



慌てて英訳のプリントに視線を戻すそいつの間違いを指先で示す。



「ここ、訳間違ってる。あとさっきやった数学も問題の半分間違ってたからやり直せ」

「えっ、あのー休憩とかは…?」

「んなもんないに決まってんだろ」

「ですよねー」




ガクッと頭を垂れた七斗は「いや、でもさ」と言って雑談を続けようとした。雑談で休憩時間を増やそうって魂胆か。

その手には乗るかと採点し終わった数学のプリントを七斗の前に突き出した所で、



「芳野さん彼氏とかいないの?」

「あ?」



そいつの口から出た単語に思いがけず低い声が出た。



「ちょ、そんな怒んなって。だって芳野さんももう大学2年生だろ? 彼氏とか出来ちゃっても可笑しくないんじゃねぇ? お前芳野さんに彼氏できたらどうすんの?」




もし、芳野ちゃんに彼氏が出来たら?



そんなの…




「法で裁かれない範囲で相手の男をぶっ飛ばす」

「おいおい。お前が言うと冗談に聞えねーよ」

「は? 冗談じゃねぇし」

「え……お、おお…そっか」
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