消極的に一直線。【完】
「雫、おまたせー」



そこに、倖子ちゃんの声が、大きく響いた。



目を向けると、内巻きの髪を指でくるくると弄びながら、倖子ちゃんがこっちに歩いてくる。



倖子ちゃんは、ちらっとカウンターの方に視線を向けて、苦い顔をした。



「中雅鈴葉もいたんだ」



ガタ、と音をたてて、向かいの椅子に座る。



「雫、大丈夫?」



顔を覗き込まれて、小さく頷くと、倖子ちゃんはあからさまに息を吐いた。



「コーヒー飲んで、早く他のところ行こ」



そう言って、朝羽くんを呼ぶと、コーヒーを二つ注文した倖子ちゃん。



コーヒーは、すぐにやってきた。



「飲んだらカラオケ行こう。雫から、いろいろ話聞きたいしさ」



倖子ちゃんは、少しだけ笑って、カップに口をつけた。



「うん」



何の話か、なんて、すぐにわかる。


今日、気づいてしまった、私の気持ち。


そして、鈴葉ちゃんと颯見くんの二人に感じている、この気持ち。



倖子ちゃんに、早く聞いてほしい。



コーヒーは少し苦くて、できるだけ早く喉に流し込んだ。
< 113 / 516 >

この作品をシェア

pagetop