消極的に一直線。【完】
「ごめん。なんか、ほんとごめん」


倖子ちゃんに謝られて、必死で首を横に振った。



私は、謝られるような人間じゃない。


倖子ちゃんがあんなことを言ったのは、私のせいだから。



謝りたい衝動に駆られたけど、今、謝るのは、少しずるいような気がして、やめた。



「あの、鈴葉ちゃん、」



私は、鈴葉ちゃんのことも、倖子ちゃんのことも、大好きだから。



言うべきことが、定まって、スーッと息を吸う。



「倖子ちゃんが、こんなこと言ってしまったのは、ちょっと理由があって……、だから、あの、悪いように思わないで」



言ってから、なんだか偉そうだったかもしれないと不安が渦巻きだした。



だけど鈴葉ちゃんは、いつものようにふわりと笑ってくれる。



「大丈夫。寺泉さんが悪くないのは知ってるからね」



やっぱり鈴葉ちゃんは、すごい人だ。



鈴葉ちゃんは、こんなにいい人なのに。



鈴葉ちゃんの嫌味のない笑顔が、罪悪感を大きくさせる。



そんな私の心の内なんて知らない鈴葉ちゃんが、あ、と私の後ろに視線を移して無邪気に手を振った。



その視線を辿って、後ろを振り返ると、手を振りながら歩く朝羽くんの姿。



「あれ? 哀咲さんと……寺泉さん」



朝羽くんは、振り返った私と倖子ちゃんの姿を確認して、少し戸惑ったように苦く笑った。



「カズ、おかえり」


「うん。鈴葉、大丈夫なのか? その……寺泉さん」


「あーまたカズはそうやって寺泉さんのこと言う。寺泉さんは私をいじめてるわけでも何でもないんだから」


「あー、うん……」



鈴葉ちゃんと朝羽くんの会話がスラスラと流れていく。



こうやって見ていると、鈴葉ちゃんと朝羽くんも、すごく仲が良くて、雰囲気もいい。



鈴葉ちゃんと颯見くんが仲良く話しているときは、あんなに色んな思いが渦巻いたのに、朝羽くんだと、むしろ、微笑ましく思える。



やっぱりそれは、私が颯見くんを好きだからなのかな。
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