消極的に一直線。【完】
「あった。これだね?」



サッと取り出された一枚を、見せられて。私は、あ、と声が漏れていた。



スペードの七のトランプ。



「正解?」



私が驚きながら頷くと、洲刈くんは、成功だ、とガッツポーズした。



「英磨のその手品、私知ってる」


「ってか英磨に手品、似合わねぇなぁ」



満足そうな洲刈くんに、吉澄さんと西盛くんの鋭いツッコミが入って。



「え、何それ。せっかく哀咲さんが来るからって頑張って好感度を」


「上がってないから」



思わず、フッと吹き出して笑ってしまった。



それを見て、洲刈くんは満足そうに笑う。



「僕は、洲刈英磨。一年七組。好きなことは、人を笑わせること」



人を笑わせることが好きなんて、素敵だなぁと思った。



「英磨は、サービス精神旺盛だし、そんな顔じゃなかったらモテてたと思うよ」


「おい、そんな顔ってなんだよ歌奈! フォローになってねぇよ!」



また笑ってしまうと、洲刈くんは横目で私を見て嬉しそうに微笑んだ。



「あ、ほら、次。銀の番だよ」



吉澄さんが、まだ本を読み続けている真内くんの顔を覗き込んだ。



真内くんは、あー、と興味なさげに声をだして、パタンを本を閉じる。



「一年四組、真内銀十郎。よろしく」



向けられた切れ長の瞳が、とても綺麗で優しくて、やっぱり不思議な人だと思った。



「銀は、読書が好きで、この通り無口だけど、ほんとは優しいんだよ」



吉澄さんが、楽しそうに付け足した。



「あ、それから。哀咲さんの自己紹介は、わかってるから大丈夫だよ。哀咲雫、一年十二組、最近寺泉さんと仲が良いよね。あと、中雅さんとか颯見くんとか朝羽くんとも」



颯見くん、という言葉に反応して、胸の奥が跳ねた。



中雅さんっていうのは、鈴葉ちゃんのことで。


でも、同じクラスでもないのに、よく知ってくれてるんだなぁと、少し違和感を覚えつつも嬉しくなった。
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