消極的に一直線。【完】
午後の試合が始まって、歓声を一枚壁の向こう側に聞いているような感覚で、試合をぼんやりと眺める。



頭の中でずっと、繰り返される朝羽くんの言葉。



――鈴葉と嵐は、両想いなんだよ。お互いに気付いてないけど



聞いたその時は、案外すんなりと飲みこめたはずの言葉が、今になって、ずんずんと胸を重くさせる。



知っていたはずの事実が、一度は受け止めたはずの言葉が、何度も何度も頭の中でこだまして、消えてくれない。



颯見くんは、鈴葉ちゃんが好き。



そんなこと、出会う前から知っていた。


出会ってからは、もっと思い知らされた。



私が颯見くんを好きなのは、とても自分勝手で、とても厚かましいことで、たぶん、とても迷惑なこと。



――哀咲さんも、嵐が好きだけど、鈴葉も大切な友達。でしょ?


――だから僕たちは、











「雫、大丈夫?」



ぽん、と肩に温かい温度を感じて、見ているようで見えていなかった視界が、はっきりと脳に認識された。



倖子ちゃんが私の顔色を見るように、顔をのぞかせている。



「試合、結構前に終わったけど、」



そう言われて、はっと辺りを見回すと、あんなに賑わっていたグランドの周囲は閑散としていて。


残っているのは、私と倖子ちゃん、私の後ろで賑やかに会話を繰り広げる吉澄さんたちだけだった。
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