消極的に一直線。【完】
「あ、ごめんね」



私のせいで、寒い中待たせてしまった。



申しわけなくて、勢いよく立ち上がると、立ちくらみでふらっと視界が揺らいだ。



「雫、急がなくていいから。それより、」



何かあったの?、と倖子ちゃんが、小声で、私に視線を投げる。



反射的に、必死に首を横に振ってしまった。






「そっか……。帰ろう」



そう言った倖子ちゃんの横顔が少し寂しそうに見えて、しまった、と思った。



これほど寒い中、考え込んでいる私を待ってくれていたのに。


何もなかったはずがないなんて、倖子ちゃんは絶対わかりきってるはずなのに。



ほぼ反射的に首を横に振ってしまった理由は、たぶん、倖子ちゃんに心配をかけたくないっていうだけじゃない。



私は今もなお、受け止めたくない、なんて思っているんだ。



朝羽くんに告げられた言葉を。
朝羽くんに告げられた事実を。



だけど、それじゃあだめで。



ちゃんと、倖子ちゃんには話さなくちゃいけない。私は、ちゃんと受け止めなきゃいけない。
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