消極的に一直線。【完】
「両想い、なんだって」
言ってしまうと、案外、短い言葉だった。
倖子ちゃんは、何も言わない。
ただ、私の頭をずっと、優しくなでてくれている。
その手から伝わる温度が、なんだか全身に回っていくようで、温かい。
気付けば、後ろの吉澄さんたちも静まりかえっていて、寒くて寂しげで、でも少し温かい、不思議な空気が漂っていた。
朝羽くんは、あの言葉を言ったとき、どんな思いだっただろう。
どんな悲痛な思いで、私にその事実を伝えたんだろう。
私はあのとき、自分の気持ちのことで精いっぱいで、今の倖子ちゃんみたいに、思いに寄りそうことができなかった。
もしかしたら朝羽くんは、同じように気持ちのわかる私と、このどうにもならない痛みを分け合って、少しでも救われたいって思ったのかもしれない。
それなのに私は――。