消極的に一直線。【完】
ノートは朝羽くんが、さりげなくほとんど持ってくれて、私は朝羽くんの後ろから職員室までついていくだけだった。
職員室に入ると、太吉先生と物理の先生が豪快な笑い声を飛ばしながら、楽しそうに話していた。
失礼します、と中に入ると、太吉先生が私達に気づいて「おお、サンキューな、こっちこっち」と片手を上げる。
朝羽くんがノートを机の上に置くと、太吉先生がにんまり口を横に延ばして笑った。
「和仁、女の子手伝うなんてさすが俺の弟だな」
つんつん、と朝羽くんの肩を軽く突く。
その太吉先生の指を、朝羽くんはさりげなく避けて、呆れたようにため息を吐いた。
「兄さん、生徒に雑用押し付けるのは良くないよ。早く職員室戻りたいからって」
「何言ってるんだ。ノートを運ぶという仕事を通して、人の役に立つという学びを得てほしかったんだ」
「昼ご飯はやく食べたかっただけでしょ」
「いや、そんなことは……」
太吉先生と朝羽くんの会話は、なんだか颯見くんと鈴葉ちゃんの会話に似てると思った。
言い合いをしているように見えて、二人とも楽しそうで、仲が良いんだなってすごく感じることができる。
兄弟姉妹のいない私には、少し羨ましい。
「じゃあ、用も済んだし行くよ」
朝羽くんがひと通りのやり取りを終えて、私に「行こう」と笑顔を見せた。
去り際に「さすが、和仁は女子に優しいねぇ」なんて太吉先生の声をうけながら、職員室を出る。
失礼しました、とドアを閉めると、朝羽くんが、はぁ、と小さく息を吐いた。
「ごめんね、哀咲さん。あんな兄さんだけど本当はすごく生徒思いなんだ」
嫌わないであげてね、と言われて、大きく頷くと、朝羽くんは少し笑って安心したように頬を緩める。
朝羽くんって、すごくお兄さん思いなんだ。
だけど、そんな穏やかな朝羽くんの表情は、すぐに消えてしまった。
「哀咲さん、」
職員室前の廊下に、少しだけ緊迫した空気が漂う。
「ちょっと中庭行かない?」
頷いた私の手に、すうっと冬の冷たい空気がかすめていった。
職員室に入ると、太吉先生と物理の先生が豪快な笑い声を飛ばしながら、楽しそうに話していた。
失礼します、と中に入ると、太吉先生が私達に気づいて「おお、サンキューな、こっちこっち」と片手を上げる。
朝羽くんがノートを机の上に置くと、太吉先生がにんまり口を横に延ばして笑った。
「和仁、女の子手伝うなんてさすが俺の弟だな」
つんつん、と朝羽くんの肩を軽く突く。
その太吉先生の指を、朝羽くんはさりげなく避けて、呆れたようにため息を吐いた。
「兄さん、生徒に雑用押し付けるのは良くないよ。早く職員室戻りたいからって」
「何言ってるんだ。ノートを運ぶという仕事を通して、人の役に立つという学びを得てほしかったんだ」
「昼ご飯はやく食べたかっただけでしょ」
「いや、そんなことは……」
太吉先生と朝羽くんの会話は、なんだか颯見くんと鈴葉ちゃんの会話に似てると思った。
言い合いをしているように見えて、二人とも楽しそうで、仲が良いんだなってすごく感じることができる。
兄弟姉妹のいない私には、少し羨ましい。
「じゃあ、用も済んだし行くよ」
朝羽くんがひと通りのやり取りを終えて、私に「行こう」と笑顔を見せた。
去り際に「さすが、和仁は女子に優しいねぇ」なんて太吉先生の声をうけながら、職員室を出る。
失礼しました、とドアを閉めると、朝羽くんが、はぁ、と小さく息を吐いた。
「ごめんね、哀咲さん。あんな兄さんだけど本当はすごく生徒思いなんだ」
嫌わないであげてね、と言われて、大きく頷くと、朝羽くんは少し笑って安心したように頬を緩める。
朝羽くんって、すごくお兄さん思いなんだ。
だけど、そんな穏やかな朝羽くんの表情は、すぐに消えてしまった。
「哀咲さん、」
職員室前の廊下に、少しだけ緊迫した空気が漂う。
「ちょっと中庭行かない?」
頷いた私の手に、すうっと冬の冷たい空気がかすめていった。