消極的に一直線。【完】
「僕たちは、どうしたらいいんだろうね」



その声が、冬の風にさらわれてしまいそうなぐらい儚くて、なんだか泣きそうになった。




颯見くんと鈴葉ちゃんが二人で幸せになることを、望まなきゃいけない。



颯見くんを好きな気持ちは、もうどこかへ置いていかなきゃいけないんだ。




冬の寒さが頬を冷たくする。





「好きな気持ちは、持っちゃいけなかった」






ドクン、と心臓が重く音をたてる。



心の中では何度も思っていたことなのに、いざその言葉を耳にすると、それがズンと現実味を帯びて重くのしかかる。



冬の冷たい空気が、肺に入ってきて、少しだけジンジンと痛い。



今、その言葉を口にした朝羽くんは、もっと辛いはず。



その証拠に、前を向いたままの横顔が、泣きそうに見えた。



「朝羽、くん、」



痛い。痛い。



「だい、じょう、ぶ、?」



声が、どうしてか、すごく震えてしまう。



朝羽くんが目を少し大きくして、顔をゆっくりと向けた。



「哀咲さん、泣いて……」



その言葉で、自分の頬に水が伝っていく感覚に気づいた。



「あ、」



言葉にならない声を漏らして、右手をそっと頬に当てる。



指先の冷たい温度が、頬に、じん、と伝わって、身体の温度が一気に冷えた気がした。



潤んだ視界に、ごめん、と謝る朝羽くんの顔がぼやけて映る。



必死に首を横に振るけど、どんどん涙で視界が歪んでいく。



「哀咲さんごめん、ほんとに、ごめん」



朝羽くんのせいじゃない。朝羽くんの方が泣きたいはずなのに。


私の心はどうして、こんなにわがままなんだろう。



首を横に振りながら、目から溢れる水を、必死に手で拭った。



「哀咲さん…」

「カズっ!!」








弱々しい朝羽くんの声を打ち消す呼び声が、中庭に響き渡った。



ハッと驚いて拭っていた手を目から離す。








「嵐……?」








朝羽くんの視線につられてゆっくり目を上に向けると、二階の渡り廊下から身を乗り出す颯見くんと目が合った。
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