消極的に一直線。【完】
「なぁ、」



続けられそうになる言葉を聞くまいと、咄嗟に両耳を塞いだ。



真内くんは優しいから、そう言ってくれてるだけ。


なのに私は、これ以上聞いたら、渡しに行ってしまいそう。



私の反応を見て、開きかけた口を閉ざした真内くんが、一歩、私に近づいた。



真内くんの手がスッとのびる。



え、と思った瞬間には、両耳に当てた私の手首が優しく掴まれていた。



驚いて力の抜けた手首を、ゆっくり耳から離される。







「颯見が受け取らなかったら、俺が代わりに受け取ってやる」










解放された耳から入ってきた言葉が、思考回路に届くまで、数秒の時間を要した。




「あ……の……」



自然と出てきていた声に、真内くんの表情が緩む。



「だから、渡してこいよ」



手首を掴んでいた手が離れて、ポン、と背中を押されて。


送り出されるように、私は走り出していた。

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