消極的に一直線。【完】
「明日から春休みだねー」



いつもと同じ帰り道を、幼なじみのカズと嵐と歩く。



三月の下旬とは言え、部活終わりの、日が沈んだ夕方は、まだ風も冷たくて冬並みに寒い。



「春休みもほぼ毎日部活だけどね」



カズがそう言って、私の歩調に合わせて隣を歩く。

嵐は、数歩ほど斜め前。


いつもそう。



大通りに出ると、さりげなくカズが車道側を歩いてくれる。



一台の車が、私たちの横を追い越して、冷たい追い風が吹き抜けた。



「うわー、寒い」



思わず口にしたら、カズがごそごそポケットを探って、中からカイロを取り出した。



「これ、あげるよ」



ポン、と頭に乗せられる。



それを手に取ると、じんわり暖かい。



「いいの? カズは寒くないの?」


「僕は大丈夫だから使いなよ」


「それじゃあ……ありがとう」



カズは昔からずっとこう。



本当に優しくて顔も良いもんだから、学校の女子に人気なのも頷けてしまう。



いろんな女子に告白されてるのに、誰とも付き合わないカズ。



優しいから、好きじゃないのに付き合うなんてこと、相手に悪くて出来ない、とか思ってるんだろうな。



私も何人かに告白されたことはあるけど、断る理由はそれとは少し違う。



そんなこと、絶対にこの二人には気付かれたくないけど。
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