消極的に一直線。【完】
「ねーねー。カズはどうして誰とも付き合わないの?」


「え? いきなりなに!?」


「この前のバレンタインだっていっぱい告白されてたじゃん」


「え、なんで知って……」



うろたえるカズが面白くて、もう少し突っ込んで訊いてみたくなった。



「ねぇ、カズって恋したいとか思わないの?」


「は!? どうしたんだよ、いきなり」


「っていうかもう好きな子いたりして」


「えっ……いや、」



あれ。珍しい。



カズはこういう茶化しや冗談をかわすのが上手くて、言葉に詰まることなんてあまりないのに。



もしかしたら、こういう恋愛系の話は弱点なのかもしれない。



新しい発見にイタズラ心がウズウズと疼く。



「ねーねー、どうなのー?」


「……か、勘弁してよ」


「えーやだ。幼なじみでしょ、教えてよ」


「……。じゃ、じゃあ、嵐はどうなんだよ」



そう言って斜め前にクイッと向けられた視線に、今度は私が言葉を詰まらせた。



嵐が顔だけ振り返る。



「俺を巻き込むなよなー」


「この前も告白されて断ってたの見たぞ」


「……いいだろ別に何でも」



また、告白されてたんだ。



ドクンドクンと脈が音を立てる。



嵐の恋愛事情は聞きたくない。



「……そういえば今、向こうの通りにあるカフェでパンケーキフェアやるんだって」



無理やり話題を変えた。



もし、嵐が「実は好きな人がいて……」なんて言い始めたら。


私はきっと耐えられない。



――私は、嵐のことが好きだから。
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