消極的に一直線。【完】
「あのー、ちょっとすいません」



不意に声をかけられて、思考を止めた。



見上げると、同じ学校の制服を着た男の人が二人。



「中雅鈴葉ちゃんだよね?」


「え? はい」



なんで私の名前知ってるんだろう。

私こんな人達知らないはずなのに。



「やっぱり! マジ可愛いね」


「俺ら同じ高校の二年なんだけどさ、連絡先教えてよ」


「……え?」



ナンパ、かな。


ナンパされたことはよくあるけど、同じ高校の先輩に声をかけられたのは初めてで言葉に詰まる。



「ね、連絡先ぐらい良いじゃん。仲良くしようよ」


「いや、あの、」



いつもならさらっと断れるのに、言葉が上手く出てこない。


先輩だから、あまり失礼なことはできないし……どうしよう。






「鈴葉のお知り合いですか?」



聞き慣れた声が飛んできて、安心感と少しの高揚感に体がピクリと反応した。



好きな人の声で、不安な気持ちが全部拭い去られてしまう。



「嵐!」



思わず名前を呼ぶと、嵐は柔らかい笑みを私に向けた。



胸の奥が音を鳴らして熱くなる。



ああ、これだから私は。



ナンパした先輩二人に視線を移した嵐が、スッと私の前に立ちはだかった。


「鈴葉に何か用ですか?」


「え……いや別に……なぁ?」



先輩達はお互いに顔を見合わせて、行こうぜ、とその場を去っていった。



なんだよ彼氏持ちかよ、なんていう声が聞こえて、少しドキッとする。
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