消極的に一直線。【完】
「大丈夫か?」


「うん。ありがとう」



嵐は、優しい。



いつもは憎まれ口ばかり叩いてるくせに、こういう時は必ず私を助けてくれて。

あんな優しい顔を見せるんだから。



「鈴葉は飲み物ミルクティーだよな?」


「うん」



そう言って、店員にミルクティーとレモンティーとウーロン茶を注文する嵐。



私とカズが好きな飲み物をちゃんと把握していて、たぶん、それを注文するタイミングもちゃんと計算してる。



優しいんだ、嵐は。



「私もカズも紅茶系好きなのに、嵐だけは紅茶苦手だよね」


「鈴葉が好きなのは、紅茶は紅茶でも甘いミルクティーだけだろ。舌がお子様だから」


「な、それを言うなら紅茶飲めない嵐の方がお子様でしょ」


「あのな、俺だって最近は紅茶飲むんだよ!」


「えー、でもウーロン茶頼んでるじゃん」



いつもの憎まれ口ばかりの会話。



このひと時を楽しく思ってるなんて……私だけかな。



「待たせてごめん」



カズがトイレから帰ってきた直後、店員が頼んだ飲み物を持ってきた。



ほらやっぱり、バッチリのタイミング。



「遅いぞカズ」


「ごめんって」


「早くパンケーキ頼もうぜ」





嵐が好き。



でもいつか、きっと、この想いに決着をつけなきゃいけなくなる時が来る。



だから、それまではまだ。

嵐の一番近くにいさせてほしい。





〜鈴葉side end〜
< 208 / 516 >

この作品をシェア

pagetop