消極的に一直線。【完】
嵐はいつも正攻法で、僕はいつも狡い。



あの時もそうだ。



哀咲さんが嵐のことを好きだと気付いて、哀咲さんが練習試合を見に来たり、差し入れを持って行こうとしているのを見て。



僕は同じ状況でも、こんなに辛くて苦しいのにって。


真実を知って、僕と同じように苦しんでよって。


そんな気持ちだったと思う。



哀咲さんの気持ちなんか考えずに、ただ八つ当たりしていたんだと思う。



哀咲さんを泣かせてしまうまで、嵐に怒られるまで、僕は無意識にそんな心を使っていた。



いつも必死に話そうとしてくれる哀咲さんを、僕は泣かせてしまった。


鈴葉が、大切だと言っている友達を。






嵐なら、鈴葉が大切に思っているものを、絶対に蔑ろにしない。



もちろんそれは、鈴葉だけじゃなくて僕に対してもそうで。



そういう所。


敵わないと思う一方で、幼なじみとして誇らしいし好きだ。



どんなに鈴葉が嵐を好きでも、僕は嵐のことを嫌いになんてなれない。




~和仁side end~
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