消極的に一直線。【完】
これがもしアイツの部屋だったら、あの植物はすぐに枯らされて、枯れたことも気付かれないまま、どこか部屋の隅に転がってるんだろう。



そんな整理整頓の行き届かない部屋で、ゴロゴロしながら漫画読んで、たまに一緒に課題頑張って、ふとした拍子に触れ合うと、すごくドキドキした。



アイツの人懐っこい笑顔か脳裏に浮かんできて、ハッと息を呑んだ。



あたし、何考えてるんだろ。


もうアイツとは、とっくの昔に別れてるのに。


今は、ちゃんと新しい彼氏がいるのに。



今の彼氏のことなんか脳裏をよぎることもないのに、アイツのことはたまにこうやって思い出す。



“ごめん、別れてほしい。好きな人ができたんだ”


“誰?”


“中雅鈴葉ちゃん”



あの時の記憶が、頭の中で残酷に響く。



高校に入って数日経った時の話。



当時は、中雅鈴葉が誰かなんて知らなくて、別れるために架空の人物を作ったんじゃないかと思ってた。



だって中二の春から付き合いだして、もう二年ぐらい一緒にいたのに、高校に入ってあたしの知らないどこかで出会ったポッと出の女に気持ちが移るなんて信じられなかった。



だけど、中雅鈴葉はすぐに見つかった。



アイツが、鼻の下伸ばしながら、女に話しかけていて、その女が笑顔を振りまいてそれに応えてる。



それか、中雅鈴葉だった。
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