消極的に一直線。【完】
家で着替えて玄関を出ると、私服に着替えた真内くんが立っていた。



シンプルな格好なのに、スタイルの良さが制服よりも際立つ。



「……行くぞ」



頷いて隣を歩くと、やっぱり歩調を合わせてくれる。



こうやってテーブルゲーム部の人達は、私が道中一人にならないように、また危険な目に遭わないように、気を遣ってくれているんだ。



いつもお礼を言えていないけれど、ちゃんと言わないといけないな。



特に真内くんには、バレンタインの日のことも、ちゃんとお礼を言いたい。



無言の空間に、二人の足音だけが響く。



言うなら。
お礼を言うなら、今なんじゃ、ないかな。



そう思うと、ドクドクと脈が主張を増す。



それを抑えようと、胸に手を当てた。



駄目。
ちゃんと、お礼、言いたい。



そう思うのに、心臓の音はどんどん耳に大きく響いてくる。



歩みを進める足が、フワフワと感覚を失っていく。

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