消極的に一直線。【完】
「あのっ」



マイクを通って、裏返った自分の声が部屋に反響する。



賑やかだった部屋がしんと静まって、クラスメイト全員の視線が集まる。



マイクの震えを止めようと、必死に手に力を込めた。



「わ、私、哀咲雫、です。クラスの、一員になれる、ように、頑張りますっ」



言い切っても、マイクの震えが止まらない。



それを止めようと更に力を込めた手に、倖子ちゃんの手が覆い被さった。



そのままマイクをスッと抜き取られて、あ、と声が漏れた。



力の入れ場を失った手が、ジンジンと脈を刻む。



奪い取ったマイクを持って、倖子ちゃんが口を開いた。




「雫は、喋るの極度に緊張して苦手なんだよ。だから、」



フォローしてくれている。

そう思ったら、次の瞬間、倖子ちゃんの視線が私に向いた。



「頑張ったね」



優しい笑顔を向けられて、次第に動悸の音が止んでいく。



「そうなんだー!」


「歌が苦手ってか喋るのが苦手だったんだな」


「よろしくね、哀咲さん!」



みんなから注目を浴びているけれど、さっきまでの視線とは違う。


穏やかで温かい。
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