消極的に一直線。【完】
倖子ちゃんのおかげだなぁと思う。

それから、私が喋る勇気をくれた、颯見くんのおかげ。



そっと颯見くんに視線を向ける。


また、バチッと目が合った。



おさまりかけていた鼓動が、トクン、と、さっきとは違う動きを始める。



「やったね」



クシャッと笑ったその顔に、鼓動の音が増す。



「おい颯見ー! 飲み物何頼むー?」


「お? んじゃあコーラ!」



繋がっていた視線が解かれて、颯見くんは男子の中に入っていった。



まだ、鼓動がうるさい。



「雫、あたしちょっとトイレ行ってくるわ」


「あ、うん」



倖子ちゃんが出て行って、空いた隣のスペースの向こう側にいた女子が、スッと寄ってきた。



「ねーねー、哀咲さんって一年のとき何組?」


「じ、十二組、です」


「へー! じゃ担任は堅物の派部先生だったんだー」



はは、とその子が笑う。



私、今、このクラスに馴染んでいってるのかな。


ずっと憧れていたことが、また、叶ったのかな。


すごく、嬉しい。
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