消極的に一直線。【完】
購入した三つの紙パックを腕に抱えて、教室のある二階への階段を上る。



最後の一段まで上ると、教室へと続く廊下の前方に、真内くんの後ろ姿が見えた。



自分が持っている紙パックに目を落として、もう一度真内くんの後ろ姿を確認する。



今、渡そう。


そう思って、小走りで真内くんに近づいた。



その足音に反応したのか、真内くんが立ち止まって振り返る。



この機を逃すまいと、慌てて駆け寄って、真内くんの目の前に立つ。



腕に抱えた紙パックのなかから『大人のブラック』を選んで、手に取り抜き取ろうとした。



だけどその瞬間、スルッと空を掴むような感触がして、私の手からそれが抜け落ちる。



パシッ。と。


それは一瞬の出来事。



抜け落ちた『大人のブラック』を、真内くんの右手が掴み取った。






その一連の流れに追いつけない私が唖然としている間に、ポンっと『大人のブラック』を私の腕の中に返されてしまった。



「あ、」



思わず声が漏れる。



その声を聞き取ったらしい真内くんが、紙パックから私の顔に視線を移した。
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