消極的に一直線。【完】
「……どうした?」



低く、落ち着いた声。



早く、お礼を言って渡さなきゃ。



そう思いながらも、私が答えるのを急かそうともしない空気に、少し安心する。



これは真内くんへのお礼です、って、そう言って渡せばいい。



いつもよりも鼓動がおとなしい。



ゆっくりと深呼吸をして、『大人のブラック』をもう一度差し出した。



「これ、は、真内くん、に、」



鼓動はいつもより落ち着いていたのに、実際に声に出すと、ぎこちない。



「お、お礼、です」



言い終わると、真内くんはゆっくりと『大人のブラック』に視線を向けた。



「……大人のブラック……」



小さく低く呟いて、それを受け取る。



今になって、もしかして嫌いだったかな、と不安になった。



真内くんの顔を伺うと、フッとその表情が緩んだ気がした。



「ありがとな」



そう言って、ストローを挿し、口に咥えて、教室の方へ歩いて行く。



よかった、飲んでくれた。
嫌いじゃなかったんだ。



安心してそれを見送って、まだ腕に残る二つの紙パックに目をやった。



あとは、颯見くんと、倖子ちゃん。
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