消極的に一直線。【完】
「哀咲!」
廊下に、私の名前が響いた。
その声に、トクン、と心臓が反応する。
顔を向けると、五メートルほど先に想像通りの人物。
部活動の大きな鞄と学校指定の鞄をそれぞれ両肩にかけて歩いてくる。
トクン、トクン、と脈が早くなる。
颯見くんが、私の目の前まで来て、歩みを止めた。
「さっきの、」
言いかけた颯見くんの視線が、私の腕に抱えた紙パックに移る。
その視線に、自分の目的を思い出して、『春風の紅茶』を手に取った。
「あの、これ、昨日のお礼」
差し出す手が、少し震える。
颯見くんと接するのは、他の人と話すみたいに、苦手だとか、難しいとか、そんな風には思わないのに。
真内くんの時とは全然違う、脈の動き。
「俺なんにもしてないじゃん」
スッと出てきた颯見くんの手が『春風の紅茶』を掴む、と思ったら。
「手、震えてる」
そのままそれを素通りして、優しく手首を掴まれた。
廊下に、私の名前が響いた。
その声に、トクン、と心臓が反応する。
顔を向けると、五メートルほど先に想像通りの人物。
部活動の大きな鞄と学校指定の鞄をそれぞれ両肩にかけて歩いてくる。
トクン、トクン、と脈が早くなる。
颯見くんが、私の目の前まで来て、歩みを止めた。
「さっきの、」
言いかけた颯見くんの視線が、私の腕に抱えた紙パックに移る。
その視線に、自分の目的を思い出して、『春風の紅茶』を手に取った。
「あの、これ、昨日のお礼」
差し出す手が、少し震える。
颯見くんと接するのは、他の人と話すみたいに、苦手だとか、難しいとか、そんな風には思わないのに。
真内くんの時とは全然違う、脈の動き。
「俺なんにもしてないじゃん」
スッと出てきた颯見くんの手が『春風の紅茶』を掴む、と思ったら。
「手、震えてる」
そのままそれを素通りして、優しく手首を掴まれた。