消極的に一直線。【完】
掴まれた右手首の温度に、全神経が集中する。



まるで、そこが心臓になったみたいに、掴まれた手首が脈を打つ。



「哀咲、」



少しだけいつもより吐息の多い声に、心臓がいっそう激しく動き出した。



掴まれた右手首を中心に、熱が全身を回っていく。



もう、どうしたらいいのかわからない。



「あんまり……」







言いかけて、颯見くんの手が離れた。



右手首の温度がなくなって、少し冷えた空気が皮膚に触れる。



手に持ったままの紙パックの存在を思い出して、緩みかけた手の力を入れなおした。







「いや、ごめん」



颯見くんが視線をそらして、その紙パックを私の手から抜き取った。



あ、と漏れた声に反応して、颯見くんの視線がもう一度私に向いた。



トクン、とまた大きく鼓動が鳴る。



「これ、ありがとな」



そう小さく言って、クシャッと笑った。
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