消極的に一直線。【完】
「颯見ーっ!」



教室の方から颯見くんを呼ぶ男子の声が聞こえて、颯見くんはそれに応えて教室の方へと歩いていった。



離れていく背中を見ながら、トクン、トクン、と、まだ心臓が音を立てている。



掴まれていた右手首が、熱を持って疼く。



颯見くんにとったら、こんなこと何でもないことなのに。



私だけが、意識してるんだって、わかってる。





ーーもっと哀咲の近くにいきたい



昨日言われた言葉も。

さっき掴まれた手首も。

言いかけた言葉の続きも。



都合よく考えてしまいそうになる思考を必死に否定して、抑え込む。





颯見くんが好きなのは、鈴葉ちゃんなんだから。



まだ手に残っている『炭酸レモン』に目をやって、倖子ちゃんに渡すために教室へ向かった。
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