消極的に一直線。【完】
「うん、大丈夫」



自然と声に出した言葉に、鈴葉ちゃんはニコッと笑って、ふと私の隣に視線を移した。



「真内くん、だよね?」



向けられた先は、私の隣の席の、真内くん。



何だろう、と私も隣の真内くんを見る。



「あぁ」



読んでいた本から視線を外して、返事を返し、また本に視線を戻す。



「雫ちゃんと仲良いの?」



鈴葉ちゃんの意図のわからない質問に、真内くんがまた本から目を離して、今度は私を見た。



数秒、ただじっと私を見る真内くんに、どう対応したらいいかわからず、私も視線を返す。



仲がいい、のかな?



あまり話したりはしないけど、同じ部活だし、登下校も一緒。



友達と言ったら失礼になっちゃうかもしれないけど、仲が悪いわけではない。



「まぁ、」



真内くんが口を開いて、私から視線を外した。



「同じ部活だしな」



そう言って本に視線を戻す。



否定をされなかったことが、少し嬉しかった。



「へぇ、そうなんだ!」



鈴葉ちゃんがなんだか楽しそうに会話を続ける。



「同じクラスで、隣の席だなんて。良かったね、雫ちゃん!」



その言葉の意図が一瞬わからなくて戸惑いかけたけど、きっと新しいクラスで上手くやっていけるか心配してくれていたんだなぁと理解して、頷いた。



「そっかそっかー! 順調なんだね!」



嬉しそうに言った鈴葉ちゃんに、だけどやっぱりなんだか噛み合わない違和感を感じた。
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