消極的に一直線。【完】
「中雅鈴葉、」



後ろから鈴葉ちゃんの名前を呼ぶ声。



「そろそろ雫を解放してよ。ご飯食べたいんだけど」



振り返ると、倖子ちゃんがスッと私の頭に乗ったままの手を払った。



「あ、そうだよね、ごめんね」



なんの嫌味もない笑顔を向けて、鈴葉ちゃんは手を振り離れていく。



「また来るね!」



そう言う鈴葉ちゃんに頷いて手を振り返すと、ニコッと笑顔が返ってきた。



去り際に、颯見くんにも別れを告げて教室を出ていく。



「雫、弁当食べよ」



私の後ろの席の机にポンっとお弁当を置く倖子ちゃん。


私もお弁当を鞄から出して、同じ机に置いた。






「学食行こうぜ、颯見」


「おう」



つい聞き取ってしまう颯見くんたちの声。



ぞろぞろと賑やかに教室を出ていく姿をちらりと見送る。



ガタッと隣から椅子を引く音が聞こえて、見ると吉澄さんたちがお弁当を持って真内くんを呼びにきたみたいだった。



いつも一緒に食べてるのかな。


そう思いながら、自分のお弁当に視線を向ける。



「中雅鈴葉、真内に興味津々じゃん。颯見から鞍替え?」



興味も無さそうに、お弁当を広げながら倖子ちゃんが呟いた。



確かに、どうして急に真内くんに話しかけたんだろう。



「真内なかなか女に受ける顔してるもんねー。また来るって言ってたし、真内にアピールしにくるかもよ」






冗談ぽく言い放った倖子ちゃんの言葉通り、その日以来、鈴葉ちゃんはたまにクラスに顔を出しては、真内くんに声をかけるようになった。
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