消極的に一直線。【完】
「あんたはいいから」



隣からの低い声で、動かそうとしていた重い身体が静止した。



代わりに真内くんが転げ落ちたシャーペンを拾って、ポンっとそれが机の上に置かれる。



あ、と自然に声が漏れた。



真内くんに目を向けると、ぱちっと目があった。



拾ってくれたお礼、言わなきゃ。



「あ、の、」

「あんたさ、」



スゥッと真内くんの手がのびてくる。



「熱、」



お礼を言おうとした口から息が漏れると同時に、額に冷たい温度が張り付いた。



私の額に手を当てた真内くんが、「やっぱり」と呟く。









その瞬間。

ガタンっと。



勢いよく椅子を引く音が、教室じゅうに響いた。







手から冷たい温度が離れる。




視線を向けると、立ち上がったその人――颯見くんと視線が繋がった。



ドクン、と鼓動が鳴る。






「おい、嵐。どうしたー?」



太吉先生の声で、繋がっていた視線が解かれる。



「先生、哀咲さんが体調悪そうなんだけど」



そう答えた颯見くんの視線が、もう一度私に向く。





気付いてくれてた。心配してくれた。



どうしよう。


心臓が、どうしようもなく騒がしい。
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