消極的に一直線。【完】
「ん、確かに哀咲、だいぶ顔赤いな」



太吉先生にそう言われて、はっと顔を俯けた。



「哀咲さん熱あるんじゃない?」

「大丈夫?」

「保健室行った方がいいよ」



クラスのみんなが、口々に私を心配してくれる。



「俺、保健室連れて行きます」



颯見くんがそう言って、ゆっくりと近付いてくるのがわかった。



そっと顔を上げると、ふんわりと笑みを返された。



その瞬間に、身体の温度が一気に上昇する。



「ふーん、なるほどねぇ。んじゃ、頼んだぞ嵐。哀咲も辛いなら今度から早めに言うんだぞ」



太吉先生に何かを悟られたような気がして、慌てて颯見くんから視線を外して頷いた。



「哀咲、立てる?」


「あ、う、うん」



視線を外したまま、ゆっくり立ち上がる。



「歩ける? 肩持って」


「だ、大丈夫」


「いいから、ほら」



そっと手首を掴まれて、その手を肩に持っていかれる。



掴まれた手首と、肩に触れている手の平が、じんじんと疼くように熱い。



心配してくれているだけなのに、私はこんなに胸を高鳴らせて。



こんな不純な気持ちで、颯見くんの肩に触れてしまっている。



「体重かけていいから」



ゆっくり歩き出す颯見くんに合わせて、私も前に進む。



颯見くんの肩に触れている手が、震えてしまう。



心臓が暴れて、頭がクラクラする。






「お大事になー」



太吉先生の声とクラスの視線を受けながら教室を出ると、風が冷たく体に刺さった。
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