消極的に一直線。【完】
「歩くのしんどいだろ。気付かなくてごめん」


「あ、あの、」


「ほら、おぶるから」



振り返って、また、優しく笑う。



それに反応して、心臓が騒ぎ立てた。



「わ、私、重いから、」



颯見くんに重いなんて思われたくない。



汗もかいてるから、気持ち悪いなんてもっと思われたくない。



それに、こんなにドキドキしていること、背中越しに伝わってしまいそうで。






「俺、男だよ」





また心臓がドクンと波打つ。



「ほら、おいで」



あまりにもその声が優しくて、たくさん渦巻いていたはずの思考が、もう働かない。



ゆっくりと後ろに回って、そっと身体を颯見くんに預けた。



颯見くんの両腕が、私の両脚に回り込む。



颯見くんが立ち上がって、地面についていた私の足が宙に浮いた。



「軽すぎるぐらいだ」



はは、と笑って前に進み出す颯見くん。



足を支えてくれる腕。

密着した広い背中。

颯見くんの爽やかな香り。


距離が近すぎて、おかしくなりそう。



私だけがこんな意識して。



私だけ、何考えてるんだろう。

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