消極的に一直線。【完】
「哀咲、やっぱ身体熱いな」



ふと言われて、ハッと身体を背中から離した。



「ご、ごめんなさ、」


「あ、危ないからちゃんともたれて」



颯見くんが立ち止まる。



「で、も、」



不快に思われたくない。



「それじゃあ危なくて歩けない」


「わ、私、やっぱり、歩くよ」



鼓動はうるさいままで、身体も熱くて、汗もかいていて。

少しでも嫌に思われたくない。



「それは却下」


「でも、あ、」



颯見くんがポンっと私の体を跳ねさせたせいで、再び体が背中に密着する。







「悪いけど、降ろしたくない」







トクン、と。



胸が高鳴って、その言葉を都合よく解釈してしまいそうになる。



違う。
違う違う。


そうじゃなくて、それは颯見くんの優しさで。


本心で言ってるわけじゃない。



私に気を遣わせないように、そう言ってくれてるんだ。




「あ、ありがとうっ」



都合よく期待しそうになるのを食い止めるために、お礼の言葉を絞り出した。
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