消極的に一直線。【完】
「え、えっと、え?」
口からは、なんの意味も持たない声だけしか出てこない。
だけど、颯見くんが私を心配してくれていた、という事実が、思った以上に嬉しくて、口角が勝手に引っ張られる。
「え、あ、え、と、」
にやける頬を手で押さえて、ただ声を吐いた。
飛び跳ねた心臓の余韻がまだおさまらない。
「く、ふ、」
電話の向こうから、押し殺したような笑い声がかすかに聞こえてきた。
「雫かわいー」
「え、え?」
可愛いなんて言われ慣れていなくて、なんて返したらいいのかわからない。
意味のない声すらも出さなくなった私に、「ねー雫」と少し低いトーンの声がかかった。
その後少しだけ、沈黙が流れる。
電話越しでもわかるぐらい、倖子ちゃんが何かを言おうとしてためらっている。
「倖子、ちゃん?」
呼ぶと、んーと倖子ちゃんが唸って、はぁ、と息を吐いた後に、カサッと体勢を変える音が聞こえた。
「雫は、さ、」
少しの間があく。
何を言われるのか、不安ともどかしさで、トントンと鼓動が主張する。
「颯見と付き合いたい、とか思わないの?」
発せられた言葉が、一度耳を素通りして、数秒後に思考へたどり着いた。
口からは、なんの意味も持たない声だけしか出てこない。
だけど、颯見くんが私を心配してくれていた、という事実が、思った以上に嬉しくて、口角が勝手に引っ張られる。
「え、あ、え、と、」
にやける頬を手で押さえて、ただ声を吐いた。
飛び跳ねた心臓の余韻がまだおさまらない。
「く、ふ、」
電話の向こうから、押し殺したような笑い声がかすかに聞こえてきた。
「雫かわいー」
「え、え?」
可愛いなんて言われ慣れていなくて、なんて返したらいいのかわからない。
意味のない声すらも出さなくなった私に、「ねー雫」と少し低いトーンの声がかかった。
その後少しだけ、沈黙が流れる。
電話越しでもわかるぐらい、倖子ちゃんが何かを言おうとしてためらっている。
「倖子、ちゃん?」
呼ぶと、んーと倖子ちゃんが唸って、はぁ、と息を吐いた後に、カサッと体勢を変える音が聞こえた。
「雫は、さ、」
少しの間があく。
何を言われるのか、不安ともどかしさで、トントンと鼓動が主張する。
「颯見と付き合いたい、とか思わないの?」
発せられた言葉が、一度耳を素通りして、数秒後に思考へたどり着いた。