消極的に一直線。【完】
「よし。じゃお前らこの下に名前書いてけ」



縦線だけのあみだくじ。



太吉先生の号令で、ガタガタ、と椅子の引く音が時差をつけて連なっていく。



私も同じように立ち上がって、黒板の方へ近づいた。




「雫!」



チョーク待ちをしてると、ポンと肩に手の重みが乗る。



「近くがいいね!」



ふっと笑って倖子ちゃんが言った。



私と同じこと、倖子ちゃんも思ってくれていたんだ。



じんわりと滲み出る温かい何かが、心を満たしていく。



一年前は、席替えではしゃぐクラスメートを少し離れた場所から憧れ見る傍観者だったのに、今年はその渦中にいる。



大きく頷くと、ずいっと倖子ちゃんの顔が近寄った。



「颯見とも、ね」



ドクン、と揺れ動く鼓動の音。



自分の奥底に沈めようとしている願望を、あっさりと掘り出されてしまった。



また、ふっと笑った倖子ちゃんに、恥ずかしさが募って顔に熱が上る。
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