消極的に一直線。【完】
黒板の前には人が折り重なって楽しそうにうごめいている。



私もさっきこの中にいたんだ、と気持ちが綻んだ。



一年前にも同じ風景を同じように席から見ていたのに、全然違う色。



「チョーク空いた! 書こうぜー」



だけどそれは瞬時にして色を変えた。



「おう、サンキュー」



目が捉えてしまう、一人の男子。



「颯見の後ろがいいな俺。隣は女子がいい」


「んじゃ俺、颯見の前。隣は女子で」


「じゃ俺は颯見の隣で、反対側の隣女子」


「ちょ、それ俺だけ周り男ばっかになんじゃん」



楽しそうに笑って、周りも笑顔にしてしまう。



人気者でみんなから好かれていて、クラスの中心にいる。



鈴葉ちゃんと、同じだなぁ。



私の奥底から見え隠れする願望は、傲慢で身勝手だ。
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