消極的に一直線。【完】
髪、当たったんだ。



トクン、と鼓動が速度を速める。




―――自分から何か頑張ってみたら?



こんな時に、倖子ちゃんの言葉を思い出して、私はズルいのかもしれない。









「ごめん」と机に伏せたまま謝る颯見くんに、ゆっくり手を延ばした。




机にへばりついた颯見くんの腕。



それをたどって、腕まくりしたシャツに指先を当てた。




颯見くんの体温で少しだけ温もったシャツ。



指先にその温度が伝わってくる。





速いテンポを刻む脈。




指先が、震える。




ゆっくりと、指を曲げて、シャツをつまんだ。


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