消極的に一直線。【完】
「ん、え?」



颯見くんが、机に伏せた顔を少しだけ持ち上げた。



その視線が、シャツを掴んだ私の手に移る。



そのあと、私に視線を移しながらゆっくり体を起こす颯見くんに、何か言われてしまいそうな気がして、慌てて声を吐き出した。



「あのっ」



喉から弾き出された声は、思った以上に大きく反響した。



完全に私に向いた颯見くんの目が、一瞬大きく開く。



「怖く、なかった」



掴んだシャツを振り払われそうな気がして、ぎゅっと指先に力を入れた。



「嬉しい、と、思ったよ」






そう告げた直後、シン、とぎこちない静寂が教室を包んだ。
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