消極的に一直線。【完】
颯見くんが二重の目を見開いて、何も言わずに私を見る。



カチ、カチ、と時計が針を一秒動かすごとに、飛躍した気持ちに冷静さが戻っていく。



自分の発言を、客観的に見る自分が、警告を鳴らした。



私、今、すごいことを言ってしまった。



急に嫌な汗が手に滲んで、シャツを掴んでいた指を離した。



自惚れた発言。



こみ上げる恥ずかしさに耐えきれなくなって、顔をうつ向けた。



颯見くんは、きっと今困ってる。


こんな自惚れた厚かましいことを言われて。





颯見くんがどんな表情をしているのか、怖くて見れない。



俯いた私の視界に映る颯見くんの腕が、カサ、と音を立てて動いた。
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